AI時代に埋もれる人と突き抜ける人の決定的な差は「問い」にある

AI時代に突入した今、どんなスキルを磨くべきか。単純作業や情報の整理、一般的なアドバイスなどは、すでに生成AIが十分にこなせるようになってきた。では、AIでは代替できない「人間の価値」はどこにあるのか?

そのヒントを与えてくれるのが、鳥潟幸志氏の著書「問いの設定力」だ。AIの発達が加速する中、人間に残された不可侵領域をどう活かすかが、本書の核心テーマとなっている。

問いを立てられる人間が、生き残る

生成AIは与えられた問いに対して、それらしい答えを返す。だが、問いが浅ければ、答えも当然ながら凡庸になる。

「稼げるブログのジャンルは?」と尋ねれば、AIは検索上位に出てくるような定番ジャンルを返すだけだ。逆に、「40代女性のライフスタイル変化に対応した、継続課金型メディアを作るには?」というような問いには、精度も深度も高い返答が得られる。

つまり、価値ある情報を引き出すためには、「問いの質」こそが決定的な差になる。

AI時代に求められる人間の能力

本書では、AI時代において人間に必要な能力を以下の3つに整理している。

  • 問いの設定力
  • 決める力
  • リーダーシップ

どれもAIでは代替しにくい、人間固有の判断・意志・影響力に関わる能力だ。とりわけ、問いの設定力はこの3つの中でも最上位に位置づけられる。

なぜなら、AIとのインターフェースそのものが「問い」であるためだ。

AIが答えやすい問い、答えにくい問い

AIと人間の役割分担を理解するうえで重要なのが、「どんな問いにAIは答えやすいのか?」という視点だ。鳥潟氏は、以下の4つの軸でこれを解説している。

  • 選択肢か、意思か
  • 過去か、現在か
  • 条件付きか、理想か
  • 論理か、常理(感情)か

たとえば、複数の選択肢を提示するような問い(例:アイデア出し)はAIが得意とする。一方で、自分の意思を問う「あなたは何をしたいのか?」には答えられない。

また、過去のデータから傾向を導くのは得意だが、「今この瞬間に起きていること」に対しては対応できない。感情や人間関係といった暗黙知も、AIが扱うには未だ困難な領域にある。

このように、AIの限界を見極めながら、人間がどこで介入し、どこを任せるかが問われている。

問題解決のための問いの順番とは

鳥潟氏は、問いの設定力を高める5つの観点を提示しているが、本記事ではその中から「適切な順番で問う力」に焦点を当てて紹介する。

問題を正しく解決するには、以下の流れで問いを立てるのが有効だ。

  • What(問題の明確化)
  • Where(問題箇所の特定)
  • Why(原因の追及)
  • How(解決策の立案)

この順番を飛ばして、いきなりHow(どうするか)に飛びつくと、浅い解決策しか出てこない。

例えば「売上が落ちている」という事象に対して、まず理想の状態を設定し、現状とのギャップを把握する(What)。そのうえで、ギャップが生じているポイントはどこか(Where)を特定し、原因(Why)を掘り下げ、複数の選択択肢を検討した上で、実行可能で効果の高い手段を決定する(How)。この一連の思考プロセスを問いとして丁寧に設計することで、問題の本質に迫り、表層的でない解決へとたどり着ける。

そしてこの順番は、ChatGPTのような生成AIを活用する際にも非常に有効だ。たとえば、

Whatの段階では「売上が落ちているが、理想はどのような状態か?」

Whereの段階では「そのギャップはどこに最も顕著に現れているか?」

Whyの段階では「その原因となっている要素を複数挙げてみて」

Howの段階では「それぞれに対して考えられる打ち手を10個挙げて」

このように、各フェーズで問いを分解するだけで、AIは非常に有用なツールになる。しかしそのためには、問いそのものの順番と精度が問われる。

問いが浅いと、出てくる答えもどこかで聞いたような「ありがちな対策」に終わってしまう。だが、正しい順序で設計された深い問いは、AIの能力を真に引き出す触媒になる。

問いの強さが、思考の深さを決め、行動の質を変える。

自分らしさが問いを決める

鳥潟氏は、問いの精度を高めるには「自分らしさ」が必要だと述べている。
問いとは、単なる情報収集の手段ではなく、自分の価値観・人生観・信念の反映である。

何に違和感を持つのか
何に怒りを感じるのか
何を疑問に思うのか

それは、その人にしか生まれない問いを形づくる。だからこそ、問いは「技術」だけでは成立しない。
自分自身と深く向き合い、何を重要とするか、何を追い求めるかという根幹を明確にすることが必要だ。

生成AIの時代においては、誰もが等しく答えにアクセスできるようになる。
だが、問いの源泉は、あくまで人間にしかない。
だからこそ、思考の出発点である「問い」こそが、最大の差別化要素となる。

AI時代を生き抜く武器は「問い」である

これからの時代、単に情報を持っていること、正しい選択肢を選べることに価値はない。
AIはそのすべてを、より早く、より正確に、より疲れずにこなしてしまうからだ。

生き残るのは、問いを立てられる人間だけだ。
しかも、それは検索エンジンやAIが模倣できないレベルの深さを持った問いでなければならない。

「なぜそれを問うのか?」
「その問いの背景にある思想や価値観は何か?」
「その問いは、誰の心を動かすのか?」

こうした自問自答を経た問いだけが、AIを使いこなし、人間にしかできない付加価値を生み出す。

問いを制する者が、AI時代を制す。
あなたが今日投げかけるその問いは、本当に自分だけのものだろうか?
そして、その問いが、未来を変える可能性を秘めているだろうか?

未来を決めるのは、どんな問いを持って生きているか。
それが、AIと共存する時代における、人間の真の武器である。

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