近畿大学で開催された箕輪厚介氏の講演会は、ただの自己啓発では終わらなかった。そこには、これからの時代を生き抜くために必要な価値観の更新が、驚くほど具体的に、そして鋭利に提示されていた。
役に立つ人間は、いずれAIに置き換えられる
かつては役に立つことが全てだった。だが今、AIの進化によって「有能」は商品化され、コモディティ化されつつある。何ができるかではなく、誰がやるか。箕輪氏が繰り返し語っていたのは、その逆転構造だ。
トヨタ車のように合理的で優秀な存在より、ポルシェのように意味がある存在が選ばれる時代。さらにその先には「意味すらない」、つまり、もはや評価軸に乗らない唯一無二の存在が控えている。
興味・目的・自分。この三角形が人間関係の本質を決める
講演の中で語られた、非常に実践的かつ示唆的なフレームがある。それが「興味」「目的」「自分」を三角形として捉える思考法だ。
ただのファンで終わらず、ただのパシリにもならず、相手と対等な関係を築くにはこの3点が不可欠。興味があるからこそ接点が生まれ、目的があるから共創が生まれ、自分を持っているから関係が崩れない。SNS時代における新しい人間関係の作法とも言えるだろう。
常識は「破壊」するものではなく、もともと疑うべきもの
講演の後半で強調されたのは、いかにして「頭のおかしい行動」が未来を切り拓くかという視点だった。スイスで格闘して肋骨を痛める経験、出版業界のタブーを無視して路上でサイン会を開いた逸話、どれもが常識を疑い抜いた者だけに見える景色を語っていた。
その背景にあるのは、子どもの頃から刷り込まれた「鉛筆じゃなきゃダメ」式の教育的洗脳をいかに解除するかという課題でもある。ゆで卵を生で飲ませて固定観念を破壊する企業研修のように、無意味なルールを壊すことが、思考の自由を取り戻す鍵になる。
キャラ、意味、そして存在自体が価値になる時代
「この人じゃないとダメ」になるには、まず「役に立つ」ことが必要だ。だが、その次には「意味がある」存在になるフェーズがあり、さらにその先に「意味すら超越する」存在がある。
これは芸人でありながら絵本作家であり、ビジネスマンであり、海外展開まで行う西野亮廣氏の例にも通じる。1ジャンルでナンバーワンを目指すのではなく、複数の個性の掛け算で唯一無二を確立する。箕輪氏自身が実践してきたこの方法論は、今の時代にこそ通用する。
若さという最大の武器。知らないことは最大のチャンス
箕輪氏は言う。学生の強さは「無知」にあると。知らないからこそ、自分の限界を勝手に決めない。知らないからこそ、飛び込んでみようと思える。30代以降の成功者には共通している経験がある。それは、20代のうちに、狂ったように努力した2〜3年があることだ。
その濃密な時間が、社会構造の摩擦をすり抜けていく滑走路となる。飛行機が一度上空に達すれば、あとは滑るように進むように。
好奇心は「維持する」のではなく「使い続ける」もの
使えば育ち、使わなければ枯れるのが好奇心だ。YouTubeの切り抜き動画で時間を浪費するより、少しでも気になった場所に足を運ぶ。変なイベントに顔を出す。スイスに行って戦う。誰かに笑われても、その一歩が未来を切り拓くかもしれない。
最後に:今すぐ狂え。意味のない衝動を抱きしめろ
箕輪厚介氏が講演を通じて最も伝えたかったのは、「狂えるうちに狂っておけ」ということだろう。知性の仮面を被って安全な道を歩むのではなく、あえて意味のない行動を連発する。その先にしか、意味のある人生も、意味すら超越した価値も存在しない。
学生のうちに、自分の中の「おかしさ」を誇りに変えること。それが、未来を突き破る最初のスタート地点になる。
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