「人と力を合わせれば、夢が叶う」
それは確かに美しい理想だ。しかし現実のビジネスの世界では、この理想があっけなく崩れ去ることも少なくない。
特に「共同経営」というスタイルにおいては、その崩壊のスピードが想像以上に速い。
このテーマに正面から向き合い、本質的な理由を掘り下げていこう。
そもそも、なぜ共同経営を選んでしまうのか
多くの人が「一人では不安だ」「リスクを分散したい」「役割を分担したい」と考え、仲間と組む。
だがその根底には、「自分ひとりでは成功できる自信がない」という不安が潜んでいることが多い。
自信のなさは、実力のなさに通じている。そして「自信のない者同士」で始まる共同経営は、構造的にすでに危うい。
類は友を呼ぶ。そして失敗も呼び寄せる
「実力のある誰かと組みたい」と考える人間は、同じように自信がない人と巡り合う。
結果的に、集まるのは半人前の人材ばかり。お互いに大きな期待をかけながらも、実際には誰も突破口を開けない。まるで、漕ぎ手がいないボートのように、進まない時間が続いていく。
三人寄れば文殊の知恵は幻想
プログラミング未経験者が何人集まっても、高品質なソフトはできない。ビジネスでもまったく同じだ。能力のない者同士が集まっても、売上は作れず、生活の見通しも立たない。
それでも「自分たちなら何とかなる」という幻想にすがってしまう。その心理が、共同経営の地雷原を踏ませるのだ。
知人・元同僚・家族・恋人──関係性が近いほど崩壊は早い
米国でのスタートアップ研究で明らかになったデータがある。共同経営者同士の関係性が「近い」ほど、事業の崩壊リスクは上がるのだ。
- 最も安定するのは、元同僚
- 次が、ビジネス上の知人
- 最も不安定なのが、親友や家族、恋人同士
「気が合う」関係と「仕事ができる」関係は、まったくの別物である。
言うべきことを言えない関係の末路
家族や友人との共同経営では、センシティブな話題を避けがちだ。
「株の配分」「誰がどれだけ働いているのか」「成果と報酬の不均衡」──こうした話題は本来、早い段階で明確にしておくべきだが、関係を壊したくない気持ちがそれを先送りにする。
結果、問題は水面下で膨らみ、ある日突然、破裂する。
代表は一人。ここが絶対ルール
事業において、意思決定と責任を負うのは必ず「一人」でなければならない。これを無視して、代表が複数いる形で組織をスタートさせると、必ず対立が起きる。
誰が最終判断を下すのか。誰が責任を取るのか。明確にしていないまま走り出せば、当然、運営は迷走する。
実例から導かれる“組織設計”の落とし穴
共同経営が失敗する最大の要因は、「責任の分散」ではない。むしろ、責任の曖昧さである。
例えば、3人の共同代表がいる組織があったとしよう。誰が何を決めるのか、誰が最終的に責任を負うのかが不明確なまま、事業は動き出す。
このような組織は、以下のような構造的欠陥を抱えている。
意思決定が遅い(コンセンサスが取れない)
誰も最終責任を取ろうとしない(責任のなすり合い)
トラブル発生時に矢面に立つ者がいない(対外的信用を失う)
これは「全員でやる」という理念が、実務レベルで機能しない典型である。
組織の機能性は「民主的かどうか」ではなく、「決断と責任が集中しているかどうか」で決まるのだ。
成功する組織に共通する“独裁構造”
ここで勘違いしてはいけないのが、「独裁=悪」ではないという点。
Apple創業期のスティーブ・ジョブズ、Amazonのジェフ・ベゾス、ソフトバンクの孫正義。
彼らに共通していたのは、「最終決定を自分で下す構造を守った」という点だ。
もちろん、彼らも多くの仲間と仕事をしていた。しかし、意思決定の主導権だけは誰にも譲らなかった。
なぜか?
それが「スピードと責任」の源泉になるからだ。
組織にとって致命的なのは、間違えることではない。意思決定が遅く、誰も責任を取らないままズルズルと進んでしまうことだ。
共同経営が崩れる本当の理由
金銭トラブルや業務分担の不公平など、表面的な原因は多い。
だが本質的な問題は「実力不足」と「意思決定構造の欠如」だ。
特に、実力が中途半端な者同士が集まると、最初は盛り上がるが、次第に成果が出ないことで不満がたまり、お互いの弱点を責め合うようになる。
結論:まず一人前になれ
共同経営で成功している起業家は、そもそも一人でもやっていける実力を持っていた人たちだ。だからこそ、誰と組むかを冷静に判断できる。
逆に、まだ一人前でないうちに共同経営に走るのは、自滅への第一歩だ。
まずは一人で始め、自分の手で売上を立て、責任を持って事業を動かす力をつけること。それが最も確実なルートだ。
共同経営における“合理的な分裂”のすすめ
共同で始めたからといって、ずっと共同である必要はない。
スタートアップ初期によくある「全員が代表」「全員が出資者」という状態からは、必ずどこかで脱却すべきである。
- 誰がCEOか
- 誰が最終的に意思決定を下すのか
- 誰が経済的リスクを引き受けるのか
これらを早い段階で明確にしておかなければ、やがて「機能不全」や「関係破綻」に直結する。
分裂を怖がる必要はない。むしろ、最初から「分かれる前提」で組んだ方が、結果的に良い関係を維持できる。
参考文献
https://note.com/ta_su_ku/n/n03ca07626501
https://note.com/think_kota/n/n87aa2f86e2ca
https://el.jibun.atmarkit.co.jp/noriwo_t/2015/04/post-5f9a.html
https://tameni.mynavi.jp/column/6360/
https://www.php.co.jp/php/topics/konosuke/article-38294.php
https://www.unisiacom.co.jp/blog/5268/