時間は未来から過去へ流れている。
脳は鍛えると6倍、いや100倍のスピードで動くようになる。
にわかには信じがたいこの2つの主張。
しかしこれらは、ただのスピリチュアルでもポジティブ思考でもない。
苫米地英人という、脳機能学・認知科学・言語哲学・コーチング理論の巨人が、ロジックと実験と哲学の交差点から導き出した“超思考”の核だ。
本記事では、苫米地氏の2つの講義「全速脳」「タイム・レボリューション」から、現代人が持つべき思考のOSアップデートについて徹底解説する。
クロックサイクルを上げれば、思考は加速する
パソコンのCPUにおける「クロック周波数」のように、人間の思考スピードにも加速可能な“クロックサイクル”が存在すると苫米地氏は語る。
面白いのは、このサイクルは訓練で変化するという点だ。
最初は1つの作業に20分かかっていた人が、同じ内容を10分、5分、3分と短縮できる。
その鍵は「慣れ」と「倍速トレーニング」にある。
以下は、氏が提案するシンプルかつ強力な手順だ。
- 日常の行動をすべて書き出し、各所要時間を記録
- それぞれを2倍速(半分の時間)で終えるよう挑戦
- 成功したら、3倍速、4倍速と段階的に負荷を上げる
- 到達点は「6倍速」。人間の感覚は6進法と相性が良いという脳科学的知見に基づいている
つまり、世界を24時間で処理していた人間が、144時間分の行動を1日でこなせるように変容するということだ。
この訓練の本質は、「体感時間を短縮する」のではなく、「思考処理の体内時間を加速する」こと。
常識を疑う覚悟がなければ、たどり着けない領域だ。
並列処理能力は“無意識”がすべて
人間は意識の上では2つのことしか同時に処理できない。
だが無意識下では、ほぼ無限に近い処理が可能になる。
運転しながら会話をし、音楽を聴き、目的地のルートを考えている。
これらはすべて、最初は意識で習得し、やがて無意識に“降りていった”処理群だ。
苫米地氏は言う。
「並列思考とは、無意識にどれだけタスクを落とし込めるかの勝負である」
無意識下に落とし込むためには、1つずつ徹底的に習慣化することが重要。
複数同時は非効率で、むしろ“分散”になる。
意識の世界はシリアル(直列)だが、無意識の世界はパラレル(並列)。
これを活用できるかどうかが、タスク処理スピードの天井を決める。
抽象度(グレインサイズ)を上げると、処理量は指数関数的に増える
本の分類でいうならば、
- 目の前の1冊 → 書店に並ぶ類書 → 著者の著作群 → 自己啓発ジャンル → 出版物全体 → 情報メディア全般
このように、抽象度を上げることで“同時に認識できる情報の総量”が飛躍的に増えていく。
抽象度を上げるとは、「より上位の視点を持つ」ということ。
コンビニ店員がコーヒーを出すタスクをしている時、そのタスクの上位には「店舗経営」があり、さらにその上位には「事業構想」や「企業戦略」がある。
抽象度が高くなるほど、1タスクで処理できる情報量が増える。
結果として、全体のスループット(総処理量)は桁違いに拡大する。
重要なのは、目の前のタスクだけに意識を奪われないこと。
常に「これは何の一部か?」「この構造の上位は何か?」と問い続ける習慣が、思考OSを劇的にバージョンアップさせる。
時間は未来から過去へ流れている
苫米地氏は、時間論においても常識を覆す。
我々は「現在→未来」に向かっていると錯覚している。
だが実際には、「未来→現在→過去」という流れの中に生きているという。
なぜか?
ニューヨークに向かう飛行機に乗った時、到着していなくてもニューヨークは“存在している”。
未来が先に存在するからこそ、我々はそこへ向かえる。
過去は離れていくだけで、トラウマも歴史も、やがて意識から消える。
しかし未来は、放っておいてもこちらに“やってくる”。
これを裏返すと、人生は「過去の積み重ね」ではなく、「未来からの逆算」で設計すべきということになる。
未来が原因、現在が結果。
この時間認識が、人生設計やコーチング、そしてあらゆるビジネス戦略の根幹にある。
未来にボールを投げろ。今を変えようとするな
苫米地氏は、川を流れる“ボール”の比喩でこの時間観を語る。
- 赤いボールが流れてきた。次に青いボールが来た。
- 多くの人は「赤いボールを拾ったから、青が来た」と思う。
- だが実際は、川上から別の人が青いボールを流しただけだ。
我々の行動が未来を作るのではない。
未来で誰かが“青いボール”を投げたから、今ここにそれが流れてきただけ。
つまり、今やったことと未来に起きることは「因果関係がない」ことも多い。
では、どうすれば青いボールを手に入れられるか?
未来に向けて、意図的に青いボールを投げること。
未来に目的と構造を与えること。それが“コーチング”の本質であり、“戦略的思考”の核心だ。
終わりに:脳と時間を味方につける人間だけが、世界を変えられる
苫米地英人が語る世界観は、単なる自己啓発では終わらない。
思考法、時間論、言語哲学、脳科学、コーチング、ビジネス構造論が一体となった、まさに“認知革命”である。
日々のルーティンを高速化し、抽象視点を獲得し、時間の流れを読み替える。
それらがすべて「使える技術」として提供されているのが、苫米地理論の強みだ。
現状を変えたければ、今を見つめるのではなく、
未来を設計し、そこからの逆算で現在を塗り替えろ。
すべては、未来から始まっている。