「成果をあげるにはどうすればいいのか？」
この問いに真正面から答えた書籍があります。P.F.ドラッカーの名著『経営者の条件（The Effective Executive）』。1967年の初版以来、半世紀以上にわたって読み継がれてきたこの書は、単なるマネジメント論を超え、“自己をマネジメントする”という視点から現代人すべてに通用する知恵を授けてくれます。
タイトルこそ「経営者」とありますが、本質は「できる人」の原理原則を解き明かした書。ドラッカー自身が語るように、これは経営者だけでなく、すべてのビジネスパーソン、専門職、そして組織に関わる人間に向けられた帝王学です。
ドラッカーが示した「成果をあげる人」の８つの習慣
本書では、成果を出すエグゼクティブ（＝できる人）が必ず身につけている8つの習慣が紹介されています。これは一種の行動原則であり、日々の意思決定や優先順位の判断における羅針盤となります。
- なされるべきことを考える
やりたいことではなく、出すべき結果を軸に行動する。成果のある仕事に集中するためには、この「目的志向」の思考が不可欠です。 - 組織のことを考える
私的感情ではなく、組織全体にとっての最善を選ぶ。一見冷徹にも思える判断が、結果として多くの人を救う選択になることがあります。 - アクションプランをつくる
計画なき行動は、成り行き任せにすぎない。期限、障害、成果、リソースを見越したプランニングが行動の質を決定づけます。 - 意思決定を行う
判断とは、行動の始点。正しさに基づく決断と、現場にまで落とし込む実行力が成果に直結します。 - コミュニケーションを行う
組織内の上下関係に関係なく、意図と情報が正確に伝達されなければ行動は空回りします。部下の声も、上司の情報も、フラットに検証する視点が求められます。 - 機会に焦点を合わせる
問題ではなく、チャンスにこそフォーカスせよ。損害回避よりも未来を切り拓く行動が、真の成果を生み出すのです。 - 会議の生産性を上げる
会議の目的が明確でなければ、時間の浪費にしかなりません。開始前に目的を共有し、達成次第すぐに終了する。それがプロの会議です。 - 「私は」ではなく「われわれは」を考える
個人の意志ではなく、組織としての責任を引き受ける視座へと自分を引き上げる。成果を最大化する鍵は、常に「全体のために何ができるか」にあります。
成果をあげる人が徹底する5つのセルフマネジメント原則
この8つの習慣を支える柱が、「時間・貢献・強み・集中・意思決定」の5大原則です。これらは自己を律し、他者に頼らず成果をあげるために不可欠な実践知でもあります。
- 時間を管理する
時間は他の資源と違い、「蓄積」「節約」「交換」ができない唯一の資源です。したがって、成果を出す者はまず「時間を記録する」ことから始めます。 - 貢献に焦点を合わせる
自分の仕事がどれほど組織や社会に貢献しているか。その視点なしに、仕事は単なる作業に陥ります。 - 強みを活かす
自分自身はもちろん、部下や上司の“強み”を見抜き、成果に変える。組織とは、人間の強みを成果に変える構造体であるべきです。 - 最も重要なことに集中する
多くを抱えることが優秀さではありません。成果を出す人は「過去のものを捨て」「最も重要な一つ」に集中することを恐れません。 - 意思決定をする
あいまいなまま引き伸ばすのではなく、仮説を立て、検証し、実行に移す。意思決定の質は、成果の質を決めるのです。
なぜ「成果」は訓練できるのか？
多くの人は「成果を出せる人＝才能がある人」と思いがちです。しかしドラッカーは、こう断言します。
「成果をあげることは才能ではない。習慣である」
これは大きな希望でもあります。誰にでもチャンスがある。なぜなら、習慣は繰り返しによって身につくものだからです。
重要なのは、再現性のあるプロセスを持つこと。そして何より、日々自分の行動と思考を問い続けることです。
まとめ：成果をあげる習慣は、今すぐ始められる
「自分をマネジメントする」。それは一見、自分に厳しくなるようでいて、実は最も自分を自由にする方法でもあります。
やみくもに頑張るのではなく、成果に直結する行動だけを選び抜く。
反射的に反応するのではなく、思考を習慣化する。
それが、『経営者の条件』が教えてくれる「成果をあげる人」の本質です。
あなたも今日から、「できる人」への第一歩を踏み出してみませんか？
