「このPDF、もう少し軽くしてもらえると助かります」
そんな一言に、思わず「え、20MBくらい普通に開けるのに…」と感じた経験があるかもしれません。
ですが実は、このやりとりの背景には、単なるスペックの話ではない、もっと重要な“相手への配慮”が隠れています。
この記事では、PDFファイルのサイズにまつわる誤解と現実、そして送り手・受け手の両者にとってスマートな対応策をご紹介します。
今のPC環境なら、20MBのPDFは余裕で処理できる
まず結論から言うと、現代のPCやスマホで20MBのPDFを開いたり閲覧したりすることはまったく問題ありません。
一般的なノートPCでもメモリは8GB以上、SSDも当たり前の時代。PDFの中に高解像度の画像やグラフが入っていても、スムーズに動作します。
スマホでさえ、20MB程度のPDFならストレスなく表示できます。
つまり、ファイルの“重さ”は、機器の性能にとってはすでに「問題ではない」レベルです。
それでも「軽くしてください」と言われる理由
では、なぜPDFの圧縮が求められるのか?
その背景には、いくつかの合理的な事情があります。
メールシステムの制限がまだ残っている
多くの企業のメールサーバーでは、1通あたりの添付ファイルの合計サイズに上限があります。
GmailやOutlookでは20MB程度まで対応できますが、企業や団体の中には「1ファイル2MB以内」「1通5MBまで」といった制限を設けているところも存在します。
これはセキュリティ上のリスクや、メールサーバーの負荷を抑えるためのもの。特に官公庁や大手企業では、こうした制限が今も現役で稼働しています。
受信側がスマホ中心の場合も
取引先や施設担当者がスマートフォンでメールを受け取り、そのままPDFを開くケースも多くなっています。
この場合、通信環境やデータ容量によっては、ファイルサイズが大きいと読み込みに時間がかかることも。
だからこそ、「すぐに開けるよう2MB前後に抑えていただけると助かります」という依頼は、相手の業務効率を考えた誠実なリクエストなのです。
ファイルの転送・共有をスムーズにしたい
共有リンクではなく、PDFそのものをメール添付でやりとりする場合、ファイルサイズが小さいほど安心感があります。
再送や転送、印刷依頼などのオペレーションが発生したときにも、軽いPDFならすぐに対応でき、ストレスもありません。
PDFを軽くするための具体的な方法
ここからは、PDFのファイルサイズを2MB前後に収めるための実用的な方法をご紹介します。
Adobe Acrobat Proを使う方法(精度高)
Adobe Acrobat Proをご利用中であれば、以下の手順で簡単に圧縮可能です。
- AcrobatでPDFを開く
- メニューから「File」→「Save as Other」→「Reduced Size PDF」を選択
- 対象バージョン(例:「Acrobat 10.0 or later」)を選び、保存
さらに調整したい場合は:
- 「File」→「Save as Other」→「Optimized PDF」から
- 画像解像度の調整や未使用フォントの削除などが行えます
品質を保ったまま、無駄を削ぎ落とせるため、営業資料や企画書に最適です。
無料のWebツールを使う方法(手軽で早い)
ブラウザからアップロードするだけで圧縮してくれる無料サービスもあります。
代表的なもの:
- ILovePDF(https://www.ilovepdf.com/compress_pdf)
- SmallPDF(https://smallpdf.com/jp/compress-pdf)
- PDF Compressor(https://pdfcompressor.com/)
ファイルをドラッグ&ドロップするだけで、短時間でメール添付に最適なサイズに変換できます。
Macユーザー向け:プレビュー.appを使う方法
Macユーザーの場合、「プレビュー」アプリでも簡易圧縮が可能です。
- PDFをプレビューで開く
- メニュー「ファイル」→「書き出す」を選択
- フォーマットを「PDF」に
- Quartzフィルタで「Reduce File Size」を選んで保存
※画質がやや落ちる可能性があるため、用途に応じて使い分けを。
圧縮だけでは足りない場合の見直しポイント
圧縮してもまだファイルが大きい場合は、構成ファイルそのものの見直しが必要になります。
- 画像解像度の調整(300dpi→144dpi、または72dpi)
- 不要なフォント埋め込みの削除
- 不要ページや装飾のカット
- テキストが画像として保存されている箇所をベクターデータに戻す
「見た目」と「軽さ」のバランスをとるためには、設計段階から用途に合わせて最適化しておくことが肝要です。
まとめ:配慮のあるPDFづくりが、信頼につながる
20MBのPDFを扱うこと自体は、今の時代まったく問題ありません。
それでも、送信先の環境やメールシステム、デバイスの使い方に配慮して、2MB以内に収めるという判断は、相手を思いやる立派なビジネスマナーです。
「渡して終わり」ではなく、「確実に届いて、すぐに読まれる」ことが大切。
そのために、スマートな軽量化の工夫が、あなたの資料や提案の価値をさらに高めてくれるはずです。