かつて副業は、本業に満足できない人がこっそり行うものだった。会社に隠れて稼ぐ、あるいは趣味の延長で少額を得る。そんな位置づけに過ぎなかった。
しかし現在、複業は性質そのものが変わった。収入を増やす行為ではなく、生活を安定させるための構造になっている。
雇用の前提が崩れた
終身雇用と年功序列は制度としては残っているが、機能としてはほぼ終わっている。会社が人生を保証する時代ではなくなり、企業側もそれを自覚している。結果として、個人は一つの組織に依存するほどリスクを負う形になった。
ここで起きた変化は単純だ。複業は挑戦ではなく、分散投資になった。
・収入源の分散
・スキルの市場化
・所属の複線化
この三つが同時に成立しないと、将来の選択肢が急激に狭くなる。複業を行う理由は意識の高さではなく、リスク回避に近い。
参入障壁が消えた
かつて収入源を増やすには、店・資金・設備が必要だった。つまり複業は資本を持つ人間の行為だった。
現在は違う。スマートフォンとネット接続があれば、個人がそのまま事業単位になる。
販売、発信、決済、顧客管理がすべて個人で完結する。
この変化は決定的だった。
複業が増えたのではない。
複業を止める理由が消えた。
会社側の態度も変わった
企業は副業を禁止し続ける論理を維持できなくなった。社員の生活を保証できない以上、外部収入を抑制する正当性が弱いからだ。
実態としては次の三類型に収束している。
・正式に副業許可
・届け出制
・黙認
全面禁止は形式だけ残り、運用としては消えている。会社と個人の関係が「所属」から「契約」に近づいた結果だ。
年代別の意識差
20代は最初から複線前提でキャリアを設計する。単一収入の方が不安という感覚を持つ。
30代は本業を維持しつつ小さな複業を試す層が最も多い。
40代以降は保険としての意味が強くなる。複業がある人とない人で将来のリスク差が顕著に広がる。
複業の本質は金ではない
複業の目的は収入額ではない。価値は次の四つにある。
・逃げ道
・別ルートの人間関係
・肩書きの分散
・精神的安定
収入は結果であり、核心は選択権の確保にある。
本業が止まっても生活が止まらない状態を作ることが本質だ。
現在の位置づけ
複業している人は特別ではない。
複業を考えている人も普通である。
何も考えていない状態だけがリスクになりつつある。
複業は稼ぎ方の話ではない。
生き方の構造の話になった。