詩集は難しいのに歌詞は読める、という感覚は珍しくない。
理由は単純で、歌詞は一つの書き方ではないからだ。
評価される歌詞には系統があり、それぞれ別の能力で支持されている。
同じ「深い」「刺さる」と言われても、中身はまったく違う。
社会・人間を描くタイプ
物語や人物の心理を通して人間を描く系統。
意味が読後に確定する文章になる。
海外ではボブ・ディラン、レナード・コーエン。
日本では中島みゆきが代表格。
この系統は恋愛を超えて、社会や存在を扱う。
引用され続けるのもこのタイプに集中する。
特徴
・登場人物や状況がはっきりしている
・読後に意味が収束する
・文章単体で成立する
歌詞というより短編に近い。
言葉そのものを動かすタイプ
内容より語彙配置や響きの設計で評価される系統。
椎名林檎、米津玄師がここに入る。
解釈が一つに定まらず、読むたび印象が変わる。
理解より残響が価値になる。
特徴
・比喩や象徴語が多い
・意味を固定しない
・文体が主役になる
詩に近いが、論理より言語感覚が中心になる。
共感・感情の伝達タイプ
難解さより伝達力が評価される系統。
あいみょん、SUPER BEAVER、藤井風などが該当する。
理解しやすい言葉で心理を直接伝えるため、広い層に支持される。
ライブ体験と結びつきやすいのもこの型。
特徴
・口語が多い
・意味が一度で通じる
・メッセージ性が強い
文学性とは別軸で評価される。
空気・雰囲気を提示するタイプ
物語も主張も強く出さず、状態を切り取る系統。
King GnuやAimerのように、情景や感覚を提示して印象を残す書き方がここに入る。
意味を説明せず、受け手側で補完される。
特徴
・説明を省く
・情景や温度が中心
・解釈が開いたまま終わる
理解より体験に近い読み方になる。
ずれが起きる理由
「歌詞がいい」という評価は共通でも、
人によって指している要素が違う。
文章として完成していること
言葉のセンスがあること
感情が伝わること
雰囲気が出ていること
どれを価値とするかで、評価は簡単に食い違う。
歌詞は一つの基準で比べるものではない。
まずどの系統の文章かを見ると、評価される理由が見える。